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アドカレ #コルクおすすめ2016 24日目 センター試験直前に、三田紀房『ドラゴン桜』後半

アドベントカレンダー「年末年始おすすめ作品 BY.CORK Advent Calendar 2016」の24日目です。

さて、アドベントカレンダー、クリスマスイブ担当という大役を仰せつかってしまったが(単に人がいなかっただけだが……くそっ、リア充どもめ)、実のところ、この日に相応しい作品が思い付かない。ほぼ唯一の持ちネタである今敏の『東京ゴッドファーザーズ』は、21日担当のまつおかさんに取られてしまった。

ディケンズの『クリスマスキャロル』も定番で外れが無いと思うのだが、そう言えば、半分くらいまで読んで止まっているのだった。日本に寄せて恋愛ものを選ぶとしても、僕が好きな恋愛ものジャンルは浮気・不倫なので、こんな日に相応しくない(いや、ある意味、リアルで、相応しいかも知れんが……)。

ということでクリスマスイブっぽいのは諦めました。アドベントカレンダーの趣旨に戻って、年末年始におすすめする物を選びます。

三田紀房『ドラゴン桜』

ドラゴン桜 (1)

年末年始特に意識すると言えば、センター試験だ。僕は塾の先生から、休憩を取ることの大切さ、取るタイミングについて教えてもらって、守っていた。年末年始はきちんと休んだし、試験の前日も勉強は一切せず、のんびり、気になっていた本を読んでいた(その代わり他の日は頑張って勉強していて、特に嫌いな英語は、このままやってたら気が狂いそうだと自分で感じていた……)。大工の祖父が家の車庫にバスケットゴールを取り付けてくれたので、毎日、休憩がてら、ひたすらシュートしていた(そのお陰で、文科系部活のくせに、体育のバスケットボールでめっちゃ得点してた)。

このやり方が他の人にも合うかはもちろん分からないが、「この時期にはもうメンタル面が非常に大きなウェイトを占める」「メンタルは身体の影響を強く受ける」「なので休憩などを上手に(好きなだけ、ではない)取ることがとても大事」という点については衆目の一致が見られるんではないかと思う(未確認)。

その時期のドラマが、三田紀房の『ドラゴン桜』で描かれている。テレビ版は観ていないのと、この作品について誰かと話したこともないので、世間一般のイメージは分からないけれど、僕は「一見破天荒な受験テクニックを色々紹介しているまんが」という印象で記憶していた。ところが、コルクに入社するにあたって読み直してみたら(作者の三田紀房さんのエージェントをしています)、後半に入ると、精神面をどう受験に向けていいコンディションに持っていくかという話がメインだった。心や気持ちの問題だし、自分が通過してきたことで感情移入もしやすく、共感さるシーンが多い。

特に好きなのが、二人いる主人公の一人、矢島が、父親の車に乗るところ。父親のことを嫌っておりほとんど話さない矢島だけど、先生のアドバイスもあって、少し心を開きかけ、でもまた悶着あって忌避感を覚えていた頃、たまたま、家を出るタイミングが父親とかぶる。車に乗れ、送って行くと言う父親。黙って乗る矢島。そして、降りるまで、一言も話さない。「降り際に何か一言くらい言うのかな」と思って読んでいたけれど、どちらも何も発さない。コミュニケーションのないまま、車のシーンは終わる。ここでものすごく「そうだよね!」という気持ちになり、その気持ちが何なのか分からないせいで、今に至るまで記憶に残っているのだ。

こういう、言葉にならない気持ちを抱かせるシーンが後半には色々と出てくるのでぜひ、これから受験する人、受験したことある人に読んでほしい。ただ、そこに至るまで10巻くらいを費やしていて、上に三巻までの試し読みを貼りはしたけど、正直、前半は飛ばして10巻、11巻くらいから読むのが、(年末年始のタイミングでは)いいのではないかと思ってる。

最後に、自社のことなので宣伝。三田紀房さんの公式サイトはこちら。『ドラゴン桜』にちなんで受験に関する記事なんかも載っています。

三田紀房公式サイト - http://mitanorifusa.com/

明日の担当は中山マリモさん、アドカレの予告には「ラブ・マスターX/安野モヨコ」と書いてあって、ほう……。