アペフチ

Hypothes.isがEPUBへのアノテーションのためのパートナーシップを結ぶ

notecakesをやってるピースオブケイクさんと勤め先のコルクとで、毎週月曜ジャンプの発売日(僕の住んでいた札幌では火曜発売だったけどね)に#テック会議と称してみんなでテック記事を上げるようにしましょうってなって、面白そうだしnoteでなくて自分の日記でもいいってことだったので参加してみます。これまでの記事を見てみると抽象的な話が多いようで、普段書いてる「これやってみた」という記事とは違うけど頑張ります。

別に参加者を絞るつもりはないようなので、皆さんも興味があれば更新日を月曜にずらしてみてください。noteを使う場合は#テック会議でタグ付けしておくと探しやすくてありがたいです。特に報酬とかはありません。

さて長い前置きだったけど今日は、この前Hypothes.isが出してきた、とても興奮するニュースの話をします。

A partnership to bring open annotation to eBooks
(電子書籍にオープンなアノテーションをもたらすパートナーシップ)

一行で言うと、「ウェブページやPDFへのアノテーション用のウェブアプリケーション開発及びそのホスティングサービス運用を行ってきたHypothes.isが、EPUBにアノテーションを付けられるようにするべく、複数の組織とパートナーシップを結ぶ」というニュースです。これで伝わる人は殆どいないと思うので解説します。

目次

  1. アノテーションとは
  2. アノテーションサービスのHypothes.is
  3. 電子書籍フォーマットのEPUB
  4. Hypothes.isのパートナーシップ

アノテーションとは

アノテーションというのは日本語だと「注釈」です。例えばウェブページで、ある文章に線を引っ張って自分のメモ書きを残すことはアノテーションです。

「注釈」という言葉からは外れると感じますが、単に線を引っ張るだけでも、ここではアノテーションと呼びます。

先のニュースページでハイライトされている様子。ハイライトされた部分の背景が黄色になっている。

また、ページの一部でなく、ページ全体に対して何か言及することもアノテーションです。はてなブックマークなんかがいい例だと思います。

ページ全体に対するコメントを残すのもアノテーション。画像ははてなブックマークの例。

先と同じパターンで、コメントのないブックマークも、アノテーションです。

アノテーションサービスのHypothes.is

Hypothes.isは、こういうアノテーションを、ウェブページとPDFに付けられるようにするウェブアプリケーションです。ページをハイライトしたりコメントを入力したりするためのChrome拡張やJavaScriptウィジェットを作ったり、そのアノテーションを保存・参照するためのサーバー用のアプリケーションを開発しています。

と同時に、そのアプリケーションを実際に運用して、無償で提供してもいます。この日記にもJavaScriptウィジェットを埋め込んでいて、記事を(一覧ページでなく)個別ページで読んでいる場合には右側にそのためのバーが見えているはずです。

アノテーションサービスHypothes.isのためのウィジェットを、無償で自分のウェブサイトにも埋め込める。

サイトの運用者はこのウィジェットを埋め込むことで、ページ全体または一部に閲覧者がハイライトやコメントを残せるようにできます。サイト側が対応していなくても、Chrome拡張を入れることで閲覧者はどのページにもアノテーションを付けられるようになります。付けられたアノテーションは(許可すれば)誰でも見ることができます。

こうして付けたアノテーションはHypothes.isのサーバーに保管され、どの端末、どのブラウザーでも見られるようになります(ブラウザー拡張は今のところChromeだけですが。Firefoxのは開発中で、自分でビルドして入れることはできます)。

電子書籍フォーマットのEPUB

電子書籍では、こうした「アノテーションを付けて、それをどの端末でも参照できる」という体験を既に経験していると思います。Kindleのことです。

Kindleでは電子書籍にハイライトやコメント、即ちアノテーションを付けることができる。

ところで、EPUBという電子書籍フォーマットがあります。IDPFという団体が策定したオープンなフォーマットです(KindleのはKindle Formatとかmobiとか呼ばれて、Kindleを作っているAmazon社が仕様を決めて運用しています。つまりオープンではありません)。仕様は誰でも見ることができますし、従って誰でも閲覧や作成用のアプリケーションを作れます。iBooksなどで読むことができます。

ちなみにPDFやWordファイル(*.docx)、Excelファイル(*.xlsx)、MP3なんかもオープンなファイルフォーマットです。Photoshop用ファイル(*.psd)やInDesign用ファイル(*.indd)はオープンではありません。

Hypothes.isのパートナーシップ

今回のニュースは、Hypothes.isがこのEPUBにも対応するべく、幾つかの組織とパートナーシップを結ぶ、という物です。Hypothes.isとのパートナーシップが発表された組織は以下の五つ。

NYU Libraries
ニューヨーク大学の、デジタルな物を処理し、アクセスを可能にし、また保管する所。
NYU Press
ニューヨーク大学の出版社?
Evident Point
電子出版ソリューションを提供する提供する会社。Readium(下記参照)のコアコントリビューターを数人抱えているらしい。
Readium Foundation
ReadiumJSという、EPUBを扱うJavaScriptのリファレンス実装を作っている所。ReadiumJSはDRMも扱えるとのこと。
EPUBjs project
epub.jsという、Readiumとはまた別のJavaScript実装を作っているプロジェクト。既にHypothes.isと連携したプルーフオブコンセプトを作った実績がある。

イデオロギー的に僕はオープンな物やフリーな物を支持しているので、オープンなファイルフォーマットにオープンなアプリケーションでアノテーションが付けられるというこのニュースにはとても興奮しました。

いきなりイデオロギーの話が出てきて面喰らうかも知れませんが、フリーとかオープンとかは殆どイデオロギーの話だと思っています1

ま、イデオロギーは置いておいても、オープンであればロックインされない(Kindleだと、Kindleがなくなると同時に自分の本のコメントが失われてしまう)、とか無料だとかメリットがあります。例えばiBooksで付けたブックマークをGoogle Play Booksで開くといったこともできるかも知れません(Appleがブックマークデータをダウンロードさせてくれれば)。

というような感じでいいのか知ら? 皆さんも、#テック会議ぜひ参加してみてください。

  1. 川上量生『鈴木さんにも分かるネットの未来』でそんな感じのことが書かれていてはっとしました。