アペフチ

眼鏡を掛けると

ケースから取り出して作ったばかりの眼鏡のフレームを耳に乗せるとファミレスのメニューブックのステーキの写真が目に飛び込んで来たのだが、一瞬後にまたぼやけた。それから改めてゆっくりと焦点が合い、周辺のグラスや皿なんかもよく見え始める。
眼鏡をかける動作によって眼筋が混乱したのだろう。これまでの度の合ってない眼鏡にアジャストされていた眼筋たちは僕の眼鏡を掛けるという動作を引き金に条件反射でこれまで通りの収縮或いは弛緩をした。これはつまり、眼筋は水晶体で屈折して入ってくる光の焦点を自動的にうまく合わせたり、僕の脳からの命令でわざと焦点をずらしたりするという器官ではなくて、眼鏡を掛ける、という腕の動きを覚えさせられた、独自の記憶を持つという器官なのかも知れないと思った。

WEB+DB PRESS Vol.110

@skojiさんが「WEB+DB PRESS vol.110」を買った、と言ってスクショを張っていたのが笹田耕一さんの「Rubyのウラガワ」という連載の第一回「オブジェクトはどうやって表現するのか?」で、面白そうですねという話をしていた( https://bookwor.ms/@skoji/101986558374837620 )。そうしたら@takahashimさんも記事を書いていたらしく、その紹介をされたので、買って、まずはそちらを読んでみた。

ところ、なんとSPARQLの話で(「SPARQLで知識データベースを自在に検索! オープンデータのためのWikidata入門」)、興奮して職場で声を出して驚いてしまった。SPARQLは、ちゃんと学びたいなあと思いつつ何度も挫折したクエリー言語で、オープンデータの文脈でこの記事では紹介されている。ありがたい。

原宿駅から神宮前交差点を望む

原宿駅表参道出口を出て右に進み、すぐの交差点から神宮前交差点側を向くと一ブロック離れたその交差点はまるで壁で、視界はその向こうまで通るけれど交差点のところで意識はくっきりと区切られていた。左手前には並木が一本植えられ、道を挟んだ右側にも対応するようにまた一本並べられているそれらの十歩前方にやはり一本ずつ。それと同じ並木が神宮前交差点の方からも向かってきていて、やや曲がった道なりに遠近法で少しずつ左右の幅を広げ向かってきていた。両方から伸びた並木の丁度ぶつかるところに目線は定まって、その時意識に入り込んでくるのは自動車よりも歩行者、そこの横断歩道で信号待ちしている人達だった。
道の半ばまで進んだ僕はその待ち行列の後ろに並ぶ、のではなく、対岸に向かって一番右にいる人のさらに右に立つ。視界の端の焦点の合わない部分を並木から垂れ下がった枝葉が占めてやや薄暗い中誘導される視線は横断歩道に沿っていて、その向こうに道幅一つ分左にずれて奥に入る小道がある。僕はそこを通って通勤する。その入り口を見詰めながら軽く仰ぐとそこは対岸の木の左側になっていて空が青い。青い空を見た時のすっと抜ける感じで僕は今日の自分の調子がいいのを知る。
信号が青に変わった。